警察犬日記 4


訓練を入れるにあたって最も大事なことは信頼関係です。きちんとコミュニケーションを取れることが、なにより大事になります。

名前を呼んだら、すぐ反応してほしい。

名前にも流行があり、アルフばかりが集まってしまうことも………昔、ジョンと呼ぶと7・8頭に囲まれたこともありました。チビジョンやまだらジョンや黒ジョンやビックジョンでそれぞれにかわいらしかったですが、混乱の元になったものです。チビやまだらや黒は区別のために訓練士がつけた愛称で、今になると、懐かしい思い出です。

服従訓練のポイントは、
「招呼(しょうこ)」と「待て」です。
「招呼」とは呼んだらすぐに来ること。どんな場所でも、どんな時でも必ずとんでくること。

そして、「待て」はどんな時でも役立つ、とても重要なことばです。
散歩の途中で、知人と立ち話するとき、ベンチに座ってジュースなど飲むとき、靴紐など結びなおしたいとき、側らでおとなしく待っていてくれると、本当に楽なものです。

昔、5,6頭のシェパードをノーロープで伏せさせ、順番に名前を呼んで訓練をして、終わるともとの位置に戻す訓練士を見て、みとれたことがあります。
ムチも餌も使わず指先と声だけで犬が嬉々として動いていました。

私自身も「待て」の号令をかけた後、ベンチに座ると日頃の疲れで寝入ってしまい、気が付くと最初の姿勢のまま心配そうにこちらを見ている犬がいて感動したものです。
帰り道は、体が軽くなった私と、たくさんほめられてご機嫌な犬で足取り軽やかでした。

「待て」がきっちり入ると、人間の子供よりよほど扱いやすいものです。
服従訓練は隣近所とうまくやっていくためにも、とても大事なことだと思います。無駄吠えをしないこと、散歩のとき、むやみにひっぱらないこと、交差点では、人間の横できっちり座って待てること。

「招呼」も「待て」もご自身でできる訓練です。
最初は少しずつ、できたらほめることを繰り返します。毎日10分でいいから必ずさせることを繰り返します。
あきらめないでください。きっと、犬とのきずなが深まります。