警察犬日記 5


警察犬訓練士の朝は、飛び起きるとまず犬舎へ突進です。扉を開けると、匂いの確認。異臭がしないか?下痢便とか嘔吐とかの異常な匂いがしないか確認します。それから、排便に出し動きや状態を見ながら、その日の体調を判断します。

一通りの排便出し、犬舎掃除、餌やりの後やっと訓練士の朝食です。一仕事の後なので、非常に美味しい朝食がいただけます。

その後、一頭一頭の訓練の開始です。人間の子供でしたら何人か集めて説明し教えることが可能ですが、犬の場合あくまでも一頭、一頭に向き合って教えなくてはいけません。
ですから、手間もかかり、時間もとられます。

昨日よりも少しでいいから進歩するように丁寧に教えていきます。正しい行動をとったときには、大げさにほめて理解させるようにします。おおむね、人間とのコミュニケーションがよい犬は理解力も早いようです。
犬は賢いので、訓練がパターン化すると先読みするようになります。
作業が雑になったり、横着になります。悪い癖がつくと、直すのに倍ほどの時間がかかることもあります。
ですから、その犬の理解の速度で、少しだけ変化をつけたり難しくして考えさせ、ワンパターンにおちいらないようにすることが必要です。

基本は服従訓練です。しっかりした服従訓練があり、その上で、警察犬の訓練があります。
服従作業と犯人襲撃を統合した警戒の部、臭気の選別を行う臭気選別の部、足あとを追及する足跡追及の部に分かれています。
一頭一頭、訓練をしていきながら、どの方向に持っていくと一番ベストか考えるのも楽しみのひとつです。
自分の担当した犬が、指示通りにいきいきと動いてくれて、持っている能力を発揮してくれるのは、訓練士にとって何物にも変えがたい喜びです。

競技会などでも、まだこの世界に入って2・3年にしかならない若い子でも、熱心に努力を重ね、担当した犬との相性さえよければ、ベテランを抑え優勝することがあります。
それこそが、この世界のおもしろさであり、やりがいに繋がります。普段は口答えひとつ許されない先輩と同じ土俵にあがり、うまくいけばずっと上の成績を取ることが出来るのです。

心の中で、ヤッターとつぶやく瞬間です。
もし優勝などすれば、賞賛はみんな自分のまわりに集まってきます。
ひそかに、ガッツポーズです。