警察犬日記 3


訓練には何ヶ月間か預かって訓練を入れる方法と、週に何回か自宅に犬を迎えに行って連れて帰って訓練し、その日の訓練が終わると、また自宅に送り届ける出張訓練という二通りの方法があります。

どちらにするのかは、犬の性格にもよりますし、飼い主さんの意向によります。
どうしても、その犬と離れがたい方や夜は番犬として必要な人は出張訓練になりますが、でも、自宅以外の居心地の良い場所を作ってあげることは、とても大切なことです。

病気とか旅行以外でも何かのアクシデントが発生し、犬を連れて行くことが不可能な時、いきなり知らないところに犬を預けると、その子は非常にナーバスになります。
なかには、預かった二日間の間中、食事はおろか水にも手をつけなかった子もいます。散歩に連れ出しても、不安がいっぱいなのが手に取るようにわかりました。

まるっきり外の生活を知らず七歳ぐらいになって初めて止むにやまれぬ事情で、預けられた子の緊張を想像すると同情するに余りあります。そんな子に限って、大事にされて家族の愛情たっぷりに育っていますので、なお違う環境に慣れにくい性格になっています。
まだ頭や体がやわらかい子供のうち(生後一年未満)に、一ヶ月程度でも、団体生活を体験させると、それからの生活がお互いに楽になると思います。

訓練所に入所したばかりの犬は不安です。突然、大好きな家族と離されて、知らない所、知らない人たち、知らない仲間もいます。言葉で説明するわけにも行かないので、ゆっくり、馴れるのを待ちます。
なかなか馴染まない子もいれば、すぐ友だちが出来るタイプもいます。
でも、時間が経つにつれ安心しても良いところだと理解できるようになります。一緒に遊べる友達もいますし、なかなか楽しいところだと思うようになるのです。

訓練士はその期間あわてることなしにその子の性格をみながら一緒に遊び、その子に合った訓練のプランを立てていきます。飼い主さんも預けてすぐに賢くなるとは考えないでください。
団体生活に慣れるこの期間こそが最も大事な時間で、この期間の信頼関係で訓練は犬にとっても楽しいことに変っていくのです。